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犯罪者の弁護 [日常]

長引く経済低迷(統計的なそれではなく、体感的なそれ)や、社会情勢の不安もあってか、日本社会から寛容さが失われている、ような気がする。

社会から寛容さが失われたときに、真っ先に槍玉に挙げられるものの1つに、弱い者に対する保護策がある。

代表的には、医療費補助、生活保護その他の社会保障制度。

そして、犯罪者の弁護制度もその1つなのではないかと思う。

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「犯罪者=弱い者」という言い方に違和感がある人は多いだろう。

しかし、少なくとも今の日本の社会では、「犯罪者を非難する」という行為が非難されることはない。

裁判で有罪は確定した者はもちろん、逮捕されただけの者(有罪かどうかがまだ確定していない者)に対して、誰がどのようなことを言っても、そのことが倫理的に非難されることはない(裁判所で名誉毀損と認定されることはあっても)。

今の世の中、「いくら非難しても、悪口を言っても、あることないこと言っても、そのことが周囲に非難されない」という対象は、そうそうあるものではない。

こういう存在が、社会が不安になったときに、言いかえれば、社会を構成する人間が不安感を抱いているときに、どういう扱いを受けるか。

格好の攻撃対象、捌け口になるのは避けられないだろう。

その意味で、犯罪者は弱い存在なのだ。

もちろん、罪を犯した者が、その報いとして社会的制裁を受けることはある意味当然であり、社会の構成員から非難を受けるということ自体、一種の罰として機能しているのだから、犯罪者を非難することがいけないというわけではない。

ただ、それでも、最低限守らなければならないルールというのはあると思うのだ。

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曰く、「なぜ犯罪者を国民の税金を使って弁護してやらなければならないのか」

曰く、「弁護士はなぜ臆面もなく恥知らずな主張をするのか」

これらの主張が、すんなりと耳に入って来る人は多いだろう。
いや、ほとんどの人は、全面的に同意するといってもいい。

それは、これらの主張が、

「罪を犯した者が、自分のやったことを差し置いて自分の権利を主張するなんておこがましい」

「それを助けて、人権、人権とばかり主張する人間も信じられない」

という、日本人の素朴な倫理意識に合致するからだ。

いわば、犯罪者の弁護は、本質的に日本社会の構成員によるバッシングを受けやすい行為であるといえる。

今や府知事となった、某弁護士の主張は、この日本人の素朴な倫理意識に合致しているからこそ、支持をうけるのだろう。

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でも、忘れないで欲しい。

これらの主張の行き着く先は、「罪を犯したと疑われる人間は、その言い分を一切聞かずに、行政がその判断で一方的に処分していい」というものになることに。

それは、まさに戦前の警察と同じ発想だ。

忘れてはいけない。 
特高警察をはじめとした警察のやり方は、少なくとも当初は多くの一般市民からは支持されていたのだ。

それはそうだろう。

怪しい人間(社会共同体に害を及ぼしかねない人間)を、一方的に処分してくれるのだから、真面目に生きている人間にとってはこれほど都合のいいことはない。

だが、唯一にして致命的な問題は、「真面目に生きていても、いったん疑われる立場になってしまった場合、犯罪者に対する扱いと全く同じ扱いを受けてしまう」ということ。
そして、いったんそうなってしまった場合、「言い分が一切聞かれない」のだから、申し開きをすることもできない。

こういうリスクの高い社会を、いい社会だと思う人は少ないのではないだろうか。

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以下に、日本国憲法の条文を引用する。

これらの条文は、特高警察に代表される警察の暴走による証拠なき逮捕、拷問による自白(場合によっては死亡)、冤罪での処罰に対する反省から生まれたものであること(たとえ、憲法の原案はGHQによるものであるとしても、少なくとも日本人はこの憲法を60年以上国の礎として守ってきたこと)を思い出してほしい。

そして、特高警察は、戦争中で社会に余裕がなくなったとき、社会から寛容さが失われたときに、生まれたものであることを思い出してほしい。

「犯罪者に権利なんて認める必要はない」という考えは耳になじみやすいが、その発想がいつか自分に対して牙を剥く日がくることを想像してほしい。


第31条  何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第34条  何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第37条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第38条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。


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